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Rio_Heart(モンスターハンター小説) - 物語文章

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【7】

 わたしが背後からのリオハートの突進をくらって死なないで済んだのは、単純に運が良かったからだった。
 まず、突進してくる飛竜の足で踏み潰されるのではなくて、頭に跳ね上げられたのが良かった。あの大型モンスターの体重と地面との間に挟まれてしまっては汚らしいひき肉と化すので精一杯だっただろう。逆に大げさに吹っ飛べば衝突のエネルギーがある程度は殺される。
 次に、着地した地面が柔らかい砂地だったのもわたしがその場で即死せずに済んだ一因になった。場所が海岸だったとはいえ岩がゴロゴロ露出してもいたし、あるいは海に落ちていたら水からあがろうともたもたしている間に狙い撃ちされて終わりだっただろう。

 わたしは追い討ちを食らわないように可能な限り素早く起き上がると、飛竜種の巣に通じる洞窟の入り口に向かって全速力で走り出した。
 駆け出すわたしの背中に向かって炎の玉(格好良く言えばファイア・ボール、いや、ファイア・ブレスかな)が吐き出されたが、洞窟の入り口にダイブして飛び込み、危ないところで着弾されずに済んだ。

 「よし、ここならすぐには追ってこられないし、とりあえず落ち着こう。」

 わたしは応急薬と回復薬とをがぶ飲みすると深呼吸をした。


 どうやら彼女たちから逃げ切ることは不可能そうだし大体からしてこの状況で逃げたとあってはあんまりかっこよくない。
 わたしが狙うべき決着は、なんとかして彼女をリオハートの背中から叩き落し、彼女に銃口を突きつけるなんなりしてあの飛竜をさがらせる、というようなものだろう。自分はやさしくないとか覚悟はいいのかとかなんだかんだ言った割にはあの娘を撃ち殺せる自信は無い。


 作戦その1。拡散弾をリオハートに撃ち込んで、爆風で背の上の彼女を吹っ飛ばす。
 いやダメだ、紅碧の対弩は拡散弾に対応してない。それに拡散弾も徹甲榴弾も持ってきてないし。

 作戦その2。麻痺弾でリオハートを麻痺させて、その隙に自分も背中によじ登ってリオさんを落とす。
 これもダメそう。今回は軽い気持ちで試し撃ちに来ただけだから麻痺弾持って来てないし、閃光玉も落とし穴もシビレ罠も持ってきて…
 まて、シビレ罠なら確か支給品ボックスにあったな。
 そして、リオさんが持ち出していたな。ダメだ、うん。

 結局いま持っている弾丸、通常弾レベル1・2・3、それと貫通弾レベル1と、それだけで何とかするしかない。


 いやまてよ麻痺弾レベル1だったら密林で採集できる材料で調達できるなあなどと考えながらぐずぐずしていたら、洞窟のドーム状の天井の頂上に空いた穴からリオハートが飛び込んできた。
 舞い降りてきたなんて悠長なもんじゃない、そのまま弾丸のような勢いで爪を立て、わたし目掛けて着地してきた。なんてアクロバティックな操竜技術なんだろう。

 でもわたしは跳びのいて避けた。ドスファンゴが踏み殺されるのを目の当たりにしていたらか心の準備が出来ていたのだろう。


 リオハートの脚を狙い撃ちにして転倒させよう。
 あるいはリオさんの吹いている狩猟笛を撃ち壊して旋律効果を解除させよう。
 もしくはリオさん自身を撃って落馬させよう。どうせ甲冑部分に当たるだろうし。

 なんにせよ、パワーアップしているからと言ってリオハートはリオレイアだ、いままでの経験を活かして丁寧に戦えばなんとかなるはずだ。
 重要なのは冷静に戦うこと。リオレイアとの一騎打ちと考えればそんなに絶望的な戦いではないはずだ。


 と、いうふうに楽観的な見通しを持ったのが貴様の敗因だとでも言うかのように、ハートの動きはリオレイアという範疇のそれとはかけ離れたものだった。

 予備動作無しで突然開始される突進。
 右に左に8の字に、縦横無尽に繰り出される尻尾の鞭。
 狙いは的確に、連射は容赦無く、洞窟内を焦げ付く匂いでいっぱいにするファイア・ブレス。

 ボウガンを構えている暇など無いし狙っている暇などもっと無い。


 じゃあ、即死しない程度の攻撃は食らう覚悟で、とにかく1発なり2発なり撃ち込もう。骨を断たせて、ってやつ。ちがうか。
 1発2発じゃ飛竜を転倒させることなんて出来ないだろうから、狙いは背の上の飼い主・リオさんになる。
 武器破壊を… いや、直撃させて背の上から叩き落とすのを狙おう。ハンターの世界は甘くないと、わたしは甘くないと、携帯食料は甘くないと教えてあげよう。というかやられっぱなしでシャクにさわってきた。
 泣かしてやる。


 突進を跳びのいて避ける。
 ボウガンを構える。
 踊りでも踊ってるかのように軽やかに振り返るリオハート、再び鋭い突進のために蹴られる地面。
 わたしは固定倍率スコープの先にリオさんの姿を捉えた。

 わたしは決して優秀な射撃の腕を持っているわけではないけれど、このときは命がかかっていたからだろう、かつてないほど集中力が高まっていた。
 このときくらい冴えていれば、大衆酒場の射的の密林ステージで満点を取ることだって朝飯前だっただろう。それくらいわたしは自分の視界と身体の動きとボウガンの狙いとを完全に把握していた。


 そして、それだけ注意力が高まっていたからこそ、スコープの真ん中に収まっているリオさんの顔に、涙がつたっているのに気付けてしまったんだ。


 引き金を引くのを一瞬ためらったわたしはリオハートの突進をモロに受けて、岩の壁面から露出している巨大な結晶体の剣山に叩きつけられた。

 死んだことがないのでそのケガが致命傷なのかどうかは良く判らなかったけれど、少なくともどうやらこのケガで死ななくてもじきにリオさんたちに殺されそうだなとぼんやり考えていた。


 泣くのは反則だと思います。
 女のコなんですから。

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